以前からお世話になっている歯科医師に、左下顎の奥歯を二本抜歯してもらった。奥歯が抜けたままでは食べるのに差し支えるので、しかたなく入れ歯を入れてもらったのだが、まったくものが噛めず、発音にも支障をきたす始末。憂鬱で困っていたところ、私は市民病院に勤務しているが、同僚の医師から、隣町にあるメデントグループの歯科医師を紹介してもらった。インプラント専門の歯科医師ということで、細かい医学的な内容を質問したが、明快に回答してくれたので大丈夫だなと思って、治療に踏み切ることにした。先生はなかなか慎重そうな人である。
インプラントというものは大雑把には知っていたが、細かい説明を聞くと、自分も医師でありながら、やはり少し怖い気がした。とはいうものの、このままでは物が噛めず、不自由この上ない。
精密診断の後、数日後にインプラントを植立する手術を行った。痛くないとは聞いていたが、正直、手術であるからには多少の痛みはあるだろうと思っていた。実際治療を受けてみて、本当に全然痛くないのには感心した。というか、手術中の記憶がまったくない。術後は一度、痛み止めを飲んだだけで、腫れも目立たない。家内に「ちょっとはれてるね」と、言われた程度であった。
三カ月待ってから歯を据え付けるということで、その間は不自由を我慢しなければならない。先生は「仮の入れ歯を入れましょうか」と言ってくれたが、入れ歯は気持ちが悪いので、むしろ何も入れないほうがいい。スカスカして不便だったが、入れ歯にはこりごりしているので辛抱した。
待ちに待った歯が据え付けられると、確かによく噛める。何もなしでいたところに、突然歯ができたので、最初は借りてきた歯みたいな感じで、なじむまでに多少時間がかかった。頬を噛んだりしたこともあったが、慣れるにしたがって非常に調子がよくなった。なんでも噛めるし、発音にもまったく支障を感じない。入れ歯とは雲泥の差というか、まったく違うものであることを実感した。同じ医師として、こういう医療もあることに改めて医学の進歩を再認識させられた。