伊藤:歌手と言う職業柄、仮の歯の維持に最も気を使った。なにせ8本分の歯を3本の歯周炎で必ずしも強固でない歯で支えているからである。 この内1本は、後に抜歯せざるを得なかった。6本のインプラントを植立したが、もともと出っ歯であったらしく歯槽骨が前方に傾いており、インプラントも歯槽骨の方向に斜めに植立せざるを得なかった。 上に被る冠自体は正しく生えているように見せたいので、2重冠構造と言う特殊な技法を用いた。これは1本のインプラントに2枚の冠を重ねてかぶせる方法で、一番外側の冠はインプラントの植立方向に関わらず、自由な形を作製できると言うメリットがある。しかし冠を2枚重ねるので、どうしても厚くなりがちという問題があり、気に入ってもらえなかったようだ。最後に考えたのが、薄い貴金属にセラミックを焼きつけた冠を正しい歯軸方向で作り、この場合スクリューは歯の前の面 に穴があってそこから操作することになる。 つまり金属面とスクリュー孔が歯の前に露出している状態となる。それではみっともないのでラミネートベニアとよばれるセラミックの薄膜を後付けで、貼るのである。機能も審美性も、彼女のような芸能人が要求するレベルは非常に高く、苦労するケースが多い。